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教室紹介と教授就任の挨拶

 当教室は、成人・先天性心臓大血管疾患及び呼吸器疾患に対する外科治療の診療、研究、教育を使命とし、三重県内外の関連施設とともに発展してまいりました。その萌芽は昭和28年の三重県立医科大学高茶屋分院における結核外科です。その後、京都大学より助教授として着任されていた久保克行先生が昭和32年4月1日に本邦で2番目となる胸部外科講座の初代教授に就任され正式に開講となりました(久保教授は昭和32年3月21日に肺癌に対する肺葉切除術を、同年5月には心疾患手術第一例目(Beck手術)を成功されています)。

 国立移管により当教室が三重大学胸部外科講座となるのは昭和50年4月1日ですが、それ以前には昭和39年に四国で初の開心術成功(高知赤十字病院での房室欠損症根治術)、神戸市立中央市民病院への医師派遣に続き、高知市民病院(現、高知医療センター)、公立豊岡病院、塩浜病院(現、三重県総合医療センター)、安城更生病院に診療科を開設しており、国立移管後も山田赤十字病院(現、伊勢赤十字病院)、松阪中央総合病院、国立静澄病院(現、三重中央医療センター)、浜松医療センター、永井病院、新宮市立医療センター、松阪市民病院、桑名市立医療センターに診療科を開設し、県内外で教室員が活躍しております。久保克行初代教授以降、本学・教室の先輩である草川實先生、矢田公先生、新保秀人先生が歴代教授を務められた60年を超える本邦でも有数の歴史ある胸部外科教室です。


 私は昭和34年に津市で生まれ、津市立南立誠小学校、橋北中学校、三重県立津高等学校を経て、三重大学医学部に入学しました。卒業後は直ちに三重大学胸部外科教室(草川實教授)に入局し、大学病院(胸部外科・第一外科)、中勢総合病院(現、鈴鹿中央総合病院)外科でのトレーニング後、大学病院に戻り、心臓血管外科と呼吸器外科の診療に従事するとともに大学院博士課程を修了し、気管支粘膜血流量変化による肺移植拒絶反応の非観血的早期診断法の開発で平成2年に学位を授与されました。その後は、平成3年7月からの2年間のPapworth病院(イギリス、ケンブリッジ)での研究留学期間を除き、三重大学病院で診療・研究・教育に従事しております。平成10年には専門を呼吸器外科に特化し、肺悪性腫瘍に対する抗がん剤感受性試験、低侵襲手術、根治的縮小手術をメインテーマとしてまいりました。特に、呼吸器内科、放射線科(画像診断、放射線治療、IVR)、病理の先生方とともに、肺腺癌早期・初期病変に対する診断、触知不能病変の術前マーキング、造影CTでの肺動静脈3D再構成、気管・気管支内悪性腫瘍に対する腔内照射、肺悪性腫瘍に対するラジオ波焼灼治療などの開発段階より関われたことは楽しい思い出です。


 我々の診療領域では、革新というべき目覚ましい医療技術の発展とそれに伴う専門性の高度化が進んでおり、我々も、各グループで国内・国際水準を意識した先進外科手技の導入と標準化、治療体系の確立を目指して努力しております。一方、専門高度化するあまりmicrosystemの弊害としての限られた者しかその妥当性を判定できないというような閉ざされた専門性に陥らないように、関連診療科との相互連携を強化して開かれた診療科として信頼を得たいと考えています。我々は手段としての手術や手技のみに価値を見出すのではなく、臨床医として人を癒すことを見失わずに『鬼手仏心』を体現するチームであることを信条としています。

 歴史を顧みれば、地方大学ながら、本邦での開心術黎明期をリードし、人工心臓の実験的開発、心臓・肺移植の基礎研究などでの諸先輩方の功績は大であると自負しております。その後の外科離れ、卒後研修システム改革などの影響などで苦しい時期もありましたが、働き方改革・キャリアプラン・ライフプランの多様性を許容できる組織として、近年は入局者が増加しており、若い力の萌芽を実感しています。

医学生さん、研修医、専門を特定できずに迷っている医師の皆さんへのメッセージ

 我々は、その歴史の中で、教育こそが原動力であると実感しています。私は、自分の役割を、胸部心臓血管外科で一緒に働いているスタッフやこれから我々と一緒に働く研修医、学生さんが育ち、活躍するための環境(畑)を整える(耕す)作業とイメージしています。

~ 畑を耕し、種を蒔き、肥料を与える。日の光を浴びて、自分の力でスクスク育てと、毎日、十分な水を与えて、時には雑草を抜き、害虫を駆除する ~

 指導する、導くというより、(若い芽が自分で)育つ場所を整え、“耕す”ことで、胸部心臓血管外科領域でプロフェッショナルとしてのプライドを持ち、その日常業務を「仕事」ではなく「天職」として自然と自覚するような骨太な医師を送り出したいと願っています。大学、関連施設では、自分の理想に向かって進んでいる多くの先輩を見つけることができると思いますので、いつでも気軽にスタッフに声を掛けて、見学に来てください。医局員、皆、高い志を持ち、スマートでありながら粘り強く頑張っています。


終わりに

”耕す”は英語で「cultivate」ですが、「culture (文化)」とはともに同じラテン語の「colere」から派生した言葉だそうです。“耕す”を自分の役割と書きましたが、この地味な作業である “耕す”仕事が、将来、我々の良き“文化”の創生・継承につながることを期待して、挨拶を終えたいと思います。教室員、同門一同で、なお一層、精進いたします。ご指導とご鞭撻の程をよろしくお願い申し上げます。

三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科学教室 教授 髙尾 仁二(たかお もとし)

教室紹介: プロフィール

​教室紹介

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2019年10月25日

DOCTOR'S MAGAZINE No.241, Nov. 2019 (株式会社 メディカル・プリンシプル社 2019/10/25発行)掲載

2019年4月12日

呼吸器外科が紹介されました。

教室紹介: 最新情報
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